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24 Feb 2021
ウプサラ大学の研究者らは、タンパク質EZH2の阻害が血液のがんである多発性骨髄腫のがん細胞増殖を抑制することを新たな試験で明らかにした。
この抑制はがん細胞の代謝の変化に起因する。
これらの変化は、患者がEZH2の阻害による治療に反応するか否かにかかわらず、識別用マーカーとして利用できる。
本研究はCell Death & Disease誌で発表された。
多発性骨髄腫は、免疫細胞が骨髄内で制御不能な方法で増殖する血液のがんの一種である。
この疾患は治療が非常に難しく、未だに不治とみなされているため、がん細胞内で新たな治療ターゲットを特定することが目下の急務である。
今回の新たな試験を担う研究グループは、既にEZH2タンパク質を阻害する物質を投与すると、培養された多発性骨髄腫細胞の増殖が抑えられ、死滅させられることを示していた。
今回、同グループは、多発性骨髄腫マウスモデルを使用し、EZH2阻害ががんの増殖を抑えることを明らかにした。
「我々は、EZH2を阻害する物質でヒトの多発性骨髄腫に対応するマウスのがんの一種を治療し、治療群のマウスは未治療群のマウスに比べ、がんの増殖が緩徐であることを示す徴候をいくつか発見した。
これは、臨床的介入の目標として、EZH2の可能性に関する詳細なエビデンスを示すものである」と本試験を主導したHelena Jernberg Wiklund免疫学および遺伝学、病理学部教授は語っている。
マウスモデルから得た今回の結果により、研究者らは、細胞のEZH2阻害に対する感受性を高める原因をさらに調査しやすくなった。
ヒトの多発性骨髄腫細胞はマウスモデルの細胞に比べて不均一であるが、ヒトの培養された多発性骨髄腫細胞のうち、阻害に対する感受性を示すタイプがいくつかあり、それ以外は耐性を示したことを研究者らは明らかにした。
この現象を精査するため、研究者らは、細胞の代謝産物の網羅的分析に遺伝子活性の分析を併用する方法を採用した。感受性は、これらの細胞内での特異的な代謝経路での変化と関連していることが明らかになった。
「EZH2の阻害を受けた細胞内では、メチオニンサイクル経路が変化し、非感受性細胞では検出されなかった作用がみられた。この変化は、メチオニンサイクル関連の遺伝子のダウンレギュレーションに起因していた」と同教授は述べている。
メチオニンサイクル経路における代謝産物の存在量の変化は、患者がEZH2阻害に反応するか否かを識別するマーカーとして利用することができた。これは、この治療法の臨床使用の可能性を示すものとして非常に重要である。
「我々の所見により、多発性骨髄腫細胞のEZH2阻害に対する感受性の背景にある機序の理解が一層深まる。
また、代謝産物と遺伝子活性の網羅的分析が強力なツールであり、併用すると新しい治療法を受けたがん細胞で生じることが理解しやすくなることも、今回の結果が強く示している。
多発性骨髄腫患者の新たな治療法を見出すステップとして、これらの結果が前臨床においても、臨床研究者にとっても、重要な意味をもつと我々は考えている」と同教授はコメントしている。
https://ecancer.org/en/news/19647-metabolic-response-behind-reduced-cancer-cell-growth
(2021年2月15日公開)