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e-cancer:がん全般 腫瘍増殖の背景にある物理学

03 Feb 2021

デューク大学の研究者らは、腫瘍増殖に関して新たな観点からアプローチする予測理論を展開している。

研究者らは、細胞増殖の生物学的機序に注目するのではなく、腫瘍が単一細胞から複合的ながんの腫瘤へと進展するまでを予測するロジックの展開に熱力学および物理学的な局面を取り入れる手法を取っている。

本結果はBiosystems誌の1月15日号に掲載された。

デューク医科大学放射線医学のEhsan Samei教授は次のようにコメントしている。「研究者ががんについて考えるときに第一に思い浮かべるのは生物学であり、その増殖パターンの物理的実在性を見落す傾向がある。

また、腫瘍がどのようにその環境と相互作用し、栄養素をその細胞に提供するのかという問題もあるが、これに関する説はこれまであまり注目されることがない側面であった」

デューク大学機械工学のJ.A. Adrian Bejan特別教授は次のように述べている。「我々の理論は、自然分類系がいかに発展し、フローシステムへのアクセスを拡大するよう再編成するかという根本的な概念を利用したものである。

これは、その増殖がいかにして起こるのかを説明するだけではなく、なぜ起こらざるを得ないのかを説くものである」

この新たな研究は、生存するためのシステムについて、フローへのアクセスを拡大するためには進化せざるを得ないとBejan教授が1996年に論じた構造学的な法則に則っている。

例えば、ヒトの血管系は、いくつかの大動脈と多数の微小な毛細管のネットワークを介して血流を循環するよう進化してきた。河川のシステム、木の枝、さらには最新のハイウェイや道路のネットワークまで、いずれもこの研究的観点上の同じ作用が反映されている。

この論文の中でBejan教授、Samei教授、および博士課程の学生Thomas Sauerは、腫瘍が増殖する仕組みと増殖するために内部で再編成する仕組みは、廃棄物の除去ルートと栄養素を流動させるためのアクセスを向上させる必要性に直結することを実証している。

彼らの理論ではこれらの洞察を使用し、細胞クラスターの増殖を構造物の一つの機能として予測するとともに、ある特殊な構造から次の構造へと移行することを読み取るマーカーとなる極めて重要なクラスターのサイズを予測している。

彼らの理論を検証するため、この予測について、がん性および非がん性の腫瘍の増殖パターンに関してそれぞれ独立して実施された複数の研究での測定結果と比較した。

その結果、彼らの研究から現象論的モデルで説明される増殖細胞の大規模な力学においても、最小規模のスケールでも、細胞クラスターの成長に関して統一的な観点が得られることが示された。

Bejan教授は「腫瘍が増殖するにつれて、このフローシステムは腫瘍の血管新生を通し、視覚的に捉えることのできる流れを生みだすのに十分なレベルまで拡大する。我々の理論は、この種の劇的な移行の背景に存在し、その移行がいつ生じるのかを予測する物理学を明らかにするものである」と述べている。

過去15年間、Samei教授は、いわゆるバーチャルでの臨床試験を通して新たな介入や医学的手技を検証するための計算上の極めて詳細な患者モデルの研究に取り組んできた。

これらの試験は、実際に行えば非常に高コストであるか、あるいは非倫理的に陥ることになる医学的評価を可能にする、患者や手技の代行を行うものである。最近までは、これらのバーチャルな患者で表される腫瘍は静的なものであった。

しかし、腫瘍増殖のこの新たな理論により、Samei教授はがん研究の新しい活路を拓く可能性のある、動的で増殖する腫瘍モデルを作成することに成功している。

Samei教授は現在、彼の新しいモデルから腫瘍増殖の画像を生成するプロセスの中で、実在する患者から撮影した画像と混合して、複数の放射線科医にその差異を見抜けるかどうかを調べているところである。これまでのところ、その結果は将来性のあるものであった。

「腫瘍が増殖しなければ、それは現実的なモデルとは言えない。我々が求めているのは、患者のがんが増殖しているのか縮小しているのかを判定するための画像化をどの程度の頻度で行う必要があるのかという非常に現実的な問題の答えを出すため、腫瘍増殖を正確にモデル化できるプラットフォームである」とSamei教授は述べている。

https://ecancer.org/en/news/19505-the-physics-behind-tumour-growth
(2021年1月26日公開)

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