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e-cancer:がん全般 肥満は免疫細胞機能を損ない、腫瘍増殖を早める

21 Dec 2020

肥満はさまざまな異なる種類のがんのリスクの増加、ならびに予後および生存率の低下に関連があるとされてきた。

長年にわたり、研究者らは代謝性変化や慢性炎症のような腫瘍増殖を駆り立てる肥満関連プロセスを特定してきたが、肥満とがんとの相互作用についての詳細は依然として理解し難い。

近年、マウスでの研究において、ハーバード大学医学部の研究者らは、がんの免疫療法にとって意外な関連性を持つこのパズルの新たなピースを発見した。

栄養を得ようと闘う中で、がん細胞は肥満により殺腫瘍免疫細胞を打ち負かすことができるようになる。

12月9日の Cell 誌の報告書において、高脂肪食は、腫瘍の内部にある重要な種類の免疫細胞であるCD8陽性T細胞の数および抗腫瘍作用を減少させるということを、研究チームが明らかにした。

これは、がん細胞が高エネルギー脂肪分子を貪食するため脂肪の増量に反応してその代謝を再プログラミングし、T細胞から栄養を奪い、腫瘍増殖を加速させるために起こる。

「同腫瘍を肥満と非肥満環境に置くと、がん細胞は高脂肪食に反応して代謝を配線し直すことが分かる」と、ハーバード大学医学部Blavatnik研究所細胞生物学教授、およびその研究の上席共著者であるMarcia Haigis氏は語る。

「この発見は、ある環境で潜在的に効果のある療法が他の環境においても有効であるとは限らず、我々の社会における肥満のまん延を考えるとより深い理解が必要であるということを示唆している」

この脂肪関連代謝の再プログラミングを阻止することにより、高脂肪食のマウスにおける腫瘍量を大幅に減少させることができるということを研究チームは明らかにした。CD8陽性T細胞はガンに対する免疫系を活性化させる免疫療法に使われる主要な武器であるため、この研究結果はこのような療法を改善するための新たな戦略を意味している。

「がん免疫療法は患者の生命に非常に大きな影響を与えているが、全員に有益であるわけではない」と語るのは、上席共著者のArlene Sharpe 氏、およびハーバード大学医学部比較病理学教授、Blavatnik研究所免疫学部長のGeorge Fabyan氏である。

「今や、肥満によって変化する腫瘍細胞とT細胞間での代謝の勢力争いがあることが分かっている」とSharpe氏は述べた。

「我々の研究によりこの相互作用を調査するロードマップを得ることができ、新たな方法でがん免疫療法および併用療法について考え始めることに役立てることができる」

Haigis氏、Sharpe氏、および彼らの同僚らは、大腸がん、乳がん、メラノーマおよび肺がんを含むさまざまながんのマウスモデルにおよぼす肥満の影響を調査した。

本研究の筆頭共著者、Alison RingelおよびJefte Drijversの主導により、研究チームはマウスに通常食または高脂肪食を与え、後者は体重増加およびその他の肥満関連変化へと繋がった。

その後、彼らは、腫瘍の内部および周辺のさまざまな細胞型や分子を調査した。これらをまとめて腫瘍微小環境と呼ぶ。

●脂肪性パラドックス
腫瘍は通常食の動物と比較して、高脂肪食の動物においてかなり急速に増殖するということが研究者らにより明らかにされた。

しかし、これはがんの種類が免疫原生である場合においてのみ発生する。免疫原生は多数の免疫細胞を含有することができ、免疫系により認識されやすく、免疫反応を誘発する可能性が高い。

腫瘍増殖における食餌関連の相違は、特に、がん細胞を狙い殺すことができる免疫細胞のCD8陽性T細胞の活性によるということが実験により明らかとなった。

CD8陽性T細胞がマウスで実験的に除去されなかった場合、食餌は腫瘍増殖率に影響を及ぼさなかった。

高脂肪食は腫瘍微小環境内のCD8陽性T細胞の存在を著しく減少させたが、体内のその他の場所では減少させなかった。

腫瘍内に残っているCD8陽性T細胞はあまり丈夫ではなく、分裂に時間がかかり、活動性低下のマーカーがあった。

しかし、研究所で隔離されて増殖した際、CD8陽性T細胞には正常活性度があり、腫瘍内の何かがこれらの細胞機能を弱めるということを示唆している。

研究チームはまた、明らかなパラドックスにも遭遇した。肥満動物において、肥満で予想されるように体内の他の部分では脂肪が豊富にあったとしても、腫瘍微小環境では主な細胞燃料源である重要な遊離脂肪酸が枯渇していた。

これらの手がかりにより、研究者らは通常および高脂肪食の条件下での腫瘍内のさまざまな細胞型の代謝プロフィールの包括的アトラスを作成するようになった。

がん細胞は、入手可能な脂肪量の変化に反応して適応したということが分析により明らかになった。

高脂肪食の条件下で、がん細胞は脂肪摂取量およびその利用を増加させるためにその代謝を再プログラミングすることが可能であったが、CD8陽性T細胞はそうではなかった。

これは最終的に腫瘍微小環境ではある種の脂肪酸が枯渇し、T細胞をこの必須燃料不足の状態にする。

「この逆説的脂肪酸の枯渇は、この研究の最も意外な発見の1つであった。我々はそれに非常に感心し、それは分析の足がかりになった」と、Haigis研究所の博士研究員であるRingel氏は述べた。

「肥満と全身の代謝は、腫瘍内のさまざまな細胞が栄養をどのように活用するかを変えることができるということは、興奮する発見であり、今や我々の代謝アトラスによりこれらのプロセスを詳しく分析して理解を深めることが可能である」

●ホットおよびコールド
単細胞遺伝子発現解析、大規模タンパク質調査および高解像度イメージング等の複数のさまざまな方法により、腫瘍微小環境内のがん細胞および免疫両細胞の代謝経路への数多くの食餌関連の変化を、研究チームは特定した。

特に興味深かったのは、正常細胞内のタンパク質であるPHD3が過剰な脂肪代謝へのブレーキとしての役割を果たすために現れたことであった。

肥満環境にあるがん細胞は正常な環境下と比較してPHD3の発現率は有意に低かった。

研究者らが腫瘍細胞にPHDを過剰に発現させようとした際、それにより腫瘍が肥満マウス内に脂肪を吸収する能力を減少させたことを彼らは発見した。

また、腫瘍微小環境内の重要遊離脂肪酸の入手可能量を回復させた。

PHD3発現の増加により腫瘍内の免疫細胞機能へおよぼす高脂肪食の悪影響が大きく逆転した。

高PHD3の腫瘍は、低PHD3の腫瘍と比較して肥満マウス内での増殖が遅い。

これは、CD8陽性T細胞活性増加により生じた直接的な結果である。CD8陽性T細胞が不足している肥満マウスにおいて、腫瘍増殖はPHD3発現の差には影響を受けない。

研究チームはまた、ヒト腫瘍データベースを解析し、低PHD3発現は、少数の免疫細胞により規定される「コールド」腫瘍と免疫学的に関係があることを見出した。

この関連性は、腫瘍脂肪代謝がヒト疾患において1つの役割を担い、肥満が多発性がん型の抗腫瘍免疫を減少させることを示唆すると、著者は述べた。

「CD8陽性T細胞は、CAR-Tのようながん治療やワクチン等の多くの有望な高精度がん治療の中心的焦点である」とSharpe氏は述べた。

これらの手法はT細胞ががん細胞を殺すのに十分なエネルギーを持つ必要があるが、同時に腫瘍に増殖するための栄養を持って欲しくはない。

現在、T細胞が本来持っているべき機能を阻止する、この力強く決定的なメカニズムを研究するための驚くべき総合データがある」

より広義には、この結果は肥満がどのようにがんに影響を及ぼすのか、そして治療アウトカムに及ぼす患者代謝の影響をさらに理解するための取り組みの基盤としての役割を果たす。

PHD3が最善の治療目標かどうかを語るには時期尚早であるが、この発見はがんの代謝脆弱性によってがんと闘う新たな戦略の扉を開くと彼らは述べた。

「我々は、がん増殖防止、および免疫抗腫瘍機能増加のための潜在的標的として使用することができる経路の特定に興味がある」とHaigis氏は語る。

「我々の研究は、肥満、腫瘍免疫、そして免疫と腫瘍細胞間のクロストークや競合についての洞察を得るための高解像度代謝アトラスを提供する。他にも多くの細胞型が関与し、さらに多くの調査すべき経路がある可能性がある」

https://ecancer.org/en/news/19259-obesity-impairs-immune-cell-function-accelerates-tumour-growth

(2020年12月9日公開)

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