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13 Oct 2020
カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者らは、同校のMoores Cancer Centerで進行がんの治療を受けている患者は、個別化されたがん治療を受けた場合、無増悪生存期間または全生存期間が延長する可能性が高いと報告した。
Moores Cancer Center の個別化がん治療センターの責任者で本研究の責任著者であるRazelle Kurzrock, MDのもと、精密な治療戦略を立てるために個々の患者の分子腫瘍構成を用いて治療担当医師に助言をする学際的な分子腫瘍委員会(molecular tumour board)が設立された。
「分子腫瘍委員会の推奨療法を受けた患者は、がんのゲノム変異により適合しており、転帰が改善した」とKurzrock氏は述べた。
「患者の3年生存率は、がんゲノムが適合しなかったか適合度が低い治療を受けた患者では約25%であったのに対し、適合度が最も高く個別化されたがん治療を受けた患者では約55%であった」
分子腫瘍委員会によって評価された429人の患者のうち、62%が少なくとも1つの薬剤と適合した、と研究者はNature Communications誌2020年10月2日オンライン版で報告した。
患者の20%は、併用療法を含むすべての推奨薬剤と一致した。
腫瘍委員会は助言的な役割を果たしており、38%の症例で治療担当医師は委員会が推奨する戦略を使用せず、代わりに患者の遺伝的変異と適合しないか、適合度が低い標準的な治療アプローチを選択した。
こうした患者は無増悪生存期間が短く、全生存率が低かった。
本研究の筆頭著者であり、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の加藤秀明准教授は、次世代シーケンシングの使用により、がん治療の新しい標的を同定して患者の転帰を改善できる可能性があるが、このアプローチを広く使用するには課題があると述べた。
「障壁の1つは、同じ種類のがんであってもすべてのがん患者が異なる分子パターンとゲノムパターンを持っているように見えることだ」と、希少消化器がんを専門とするMoores Cancer Centerのがん専門医である加藤氏は述べた。
「患者が持つ独特のゲノムパターンに基づいて治療法をカスタマイズしているため、治療に対する反応を予測することは難しい」
さらにこのアプローチには、学際的な専門知識のみならず、小規模な診療でいつも利用できるとは限らない薬物や臨床試験へのアクセスが必要である」
Moores Cancer Centerの分子腫瘍委員会は、基礎研究、橋渡し研究、臨床研究の専門家だけでなく、バイオインフォマティクス、遺伝学、放射線学、病理学、内科、外科、放射線腫瘍学などの複数の専門分野の医師で構成されている。
精密医療アプローチの有用性を決定する一致スコアの閾値を特定するには、より大きな規模でさらなる臨床的検討が必要であると研究者らは述べた。
https://ecancer.org/en/news/18760-personalised-cancer-therapy-improves-outcomes-in-advanced-disease-says-study
(2020年10月5日公開)