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31 Aug 2020
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急増中に放射線治療を受けているがん患者の場合は、外出自粛の指示に従うことが必ずしも選択肢とはならない。
毎日の通院は、潜在的に曝露を増加させる可能性があるので、がん患者はCOVID-19による死亡リスクが高いため特に危険である。
COVID-19が落ち着くまで放射線療法を延期する選択は、がん患者が外出自粛によりウイルス曝露を最小限に抑えるのに役立つ。
Brigham and Women’s Hospitalの研究者らの研究によると、中~高リスクの限局性前立腺がんの男性が放射線療法およびホルモン療法を受けている場合、ホルモン療法を継続している期間は放射線療法を延期しても生存に影響を与える可能性は低いことが明らかになった。
この結果はJAMA Oncology誌に掲載されている。
「前立腺がん患者の大規模データベースを使用して、放射線療法を開始するタイミングがフレキシブルである可能性を検証した」と、Brigham and Women’s Hospitalの放射線腫瘍科の研修医であるVinayak Muralidhar MDは述べた。
「私たちのデータは、これらの患者はCOVID-19感染者が減少するのを待ってから放射線療法を開始できることを示唆している。または、感染者が急増する可能性がある場合、患者は計画より前倒しで放射線療法を受け、感染者が急増する前に放射線療法を完了することを検討できる。
「私たちの研究が、患者と医療従事者が治療のタイミングについて意思決定の助けになることを願っている」と、本研究の筆頭著者であるハーバード大学医学部4年生のEdward Christopher Dee氏は述べた。
「これらの決定により、患者はCOVID-19への暴露のリスクを減らすことができるかもしれない。私たちの調査結果は、治療を延期することを選択した患者と医療従事者に安心をもたらすだろう」
放射線療法は限局性前立腺がんの患者に施術され、6〜36ヵ月のアンドロゲン除去療法またはホルモン療法とともに実施される。
前臨床データに基づいて、これらの2種類の治療は通常、患者が2ヵ月のホルモン療法を受けた後に放射線治療を受けられるようにタイミングを計って実施される。
しかし、この一連の治療を検討した2つの試験によると、短期間内にホルモン療法と放射線療法を同時に開始した場合でも転帰に影響はなかった。
Brighamの研究者たちは、国立がんデータベースにある63,000例を超える限局性前立腺がんのコホートで、これら2つの比較的小規模な試験の結果を検証したいと考えていた。
このタイプのデータを使用すると、結果を説明されなかった患者と説明した患者の間に測定されない差異がある可能性があることを研究者らは認識した。
ホルモン療法と比較して放射線療法をいつ開始したかに基づいて、症例を4つのグループに分けた。中リスクおよび高リスクの疾患の場合、4つのグループ間で全生存期間に差はなかった。
「この調査結果は患者を安心させるものであり、患者の安全を確保して前立腺がんの放射線療法のスケジュールをフレキシブルに組むことができる」とMuralidhar氏は述べた。 「本結果は、COVID-19の症例が急増している地域で、より安全に待機時間を経て治療の開始を選択できるという患者にとって重要な意味を持っている。将来的には、他のがんや治療についても調査し、 治療の延期が生存にどのように影響するかを調べたい」
(2020年8月13日公開)