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20 May 2020
Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSK)のMSK Kidsの研究者らは、小児がん患者がCOVID-19の影響を受けるリスクは高くないことを見出した。
MSK Kidsの責任者であるAndrew Kung, MD, PhDらが率いるこの新しい研究はJAMA Oncology誌に掲載された。
MSK Kidsは米国で最大級の小児がん治療プログラムであり、小児、青少年、若年成人のがんのほか、少数だが骨髄機能不全や免疫不全などの非腫瘍性疾患に関する研究が行われている。
COVID-19感染またはCOVID-19罹患率に関していえば、小児がん患者は他の子供達より脆弱なわけではない。COVID-19に感染した小児がん患者のうち、95%が軽症であり、入院の必要はなかった。
MSK Kidsの臨床医はまた、COVID-19の疑いのある無症候(性)の小児がん患者を検査したところ、陽性率はわずか2.5%であった。これに対して、成人の保護者の陽性率は15%近くに達していた。
COVID-19陽性の保護者をもつ子供のうち、陽性となったのは半数だけであった。
研究者らはまた、COVID-19感染者の大多数が男性であり、性別によって大きな偏りがあることを発見した。
結果的に本研究結果は、小児がん患者が他の子供たちよりもCOVID-19感染症や症状の影響を受けやすいわけではないこと、また、小児がん患者が無症候性のCOVID-19感染者になってはいないことを示唆している。
MSK Kidsの研究者たちは、2020年3月10日~4月12日まで、COVID-19感染に関連するリスクを軽減するためのスクリーニングと検査計画を策定した。
MSK Kidsの患者はMSKで、既知のCOVID-19感染症との接触またはCOVID-19感染症の症状の有無についてスクリーニングを受けた。
また、小児患者とその成人保護者に対してCOVID-19検査を実施した。
検査を受けた小児がん患者178人のうち、COVID-19の陽性率は、何らかの症状のある子供では29.3%だったが、無症状の子供では2.5%に過ぎなかった。
COVID-19が陽性であった患者20人のうち、女性は3人だけであった。COVID-19感染者のうち、感染に伴う症状のために非侵襲的な治療入院を必要としたのは1人だけであった。他のすべての小児患者は軽度の疾患症状があり、自宅療養となった。
検査を受けた成人保護者74人のうち、10人の患者の保護者13人がCOVID-19陽性であることがわかった。COVID-19陽性の保護者のうち、14.7%は無症候性であった。
COVID-19陽性の保護者をもつ小児患者のうちCOVID-19陽性であったのは半数だけであり、家族と密接な接触をしているにもかかわらず、子供での感染力が低いことを示唆している。
本研究の対象となった全体数は少ないものの、これらのデータによって、小児がん患者全体でCOVID-19感染症の罹患率が低く、COVID-19感染の症状のために入院を必要とするのはわずか5%であることが明らかになった。また、無症候性の小児患者ではCOVID-19の感染率が非常に低いことも見出された。
「これらの最新知見は、がんを患う子供たちがCOVID-19のより大きな危険にさらされておらず、感染したとしても健常小児と同様に軽症であることを示しており、我々は勇気づけられた」とAndrew Kung, MD, PhDと本研究の責任著者は述べた。
「これらの研究結果により、COVID-19感染による悪影響についての懸念が高まることなく、標準的な予防策と安全策を用いて、命を救うためにがん治療を続けることができる」
(2020年5月14日公開)