ニュース
31 Jan 2020
脳は一種の要塞であり、危険な病原体を防御する障壁を備えている。
しかし、脳が持つこの防御機構は同時に損害でもある。これらの障壁は、効果的な治療法がほとんどない致命的な脳腫瘍である膠芽腫などの脅威に直面すると、免疫システムを妨害する。
イェール大学の研究者らは、要塞の排水システムを介して免疫システムの助けをすり抜けることにより、逆効果となっている脳の自然な防御機構を回避する新しい方法を見出した。
これらの発見は、Nature誌に報告された。
「脳腫瘍と闘うために免疫系ができることはほとんどないと考えられてきた」と上席著者である岩崎明子氏は述べた。「膠芽腫患者が、免疫療法の恩恵を受ける方法はなかった」
岩崎氏は、Waldemar Von Zedtwitzの免疫生物学教授であり、分子生物学、細胞生物学、発生生物学の教授であり、ハワード・ヒューズ医学研究所の研究者でもある。
脳自体に細胞の老廃物を直接処理する方法はないが、頭蓋骨の内側を覆っている小血管は組織の老廃物を収集し、毒素や体の老廃物をろ過する体のリンパ系を介して排出する。研究者が新たな研究で活用したのは、この老廃物処理システムである。
これらの血管は出生直後に形成され、血管内皮成長因子CまたはVEGF-Cとして知られる遺伝子によって部分的に促進される。
イェール大学の神経学准教授であり、同論文の共著者であるJean-Leon Thomas氏は、リンパ排液が増加するとVEGF-Cが免疫応答を高めるのではないかと考えた。そして、岩崎氏の研究室の研究者で主著者であるEric Song氏は、膠芽腫腫瘍の免疫系の監視を強化するためにVEGF-Cを具体的に使用できるか否かを確認したかった。
併行して、この処理システムを介してVEGF-Cを投与すると、脳腫瘍を特異的に標的にするか否かを調査した。
研究チームは、膠芽腫のマウスの脳脊髄液にVEGF Cを投与し、脳の腫瘍に対するT細胞応答のレベルの増加を観察した。
免疫療法で一般的に使用される免疫系チェックポイント阻害剤と組み合わせると、VEGF-C治療はマウスの生存期間を大幅に延長した。
つまり、がん免疫療法薬と組み合わせたVEGF-Cの導入は、脳腫瘍を標的とするのに明らかに十分であった。
「これらの結果は驚くべきものである」と岩崎氏は語った。「神経膠芽腫患者にこの治療を提供したい。現在の手術と化学療法の予後は依然として厳しい」
https://ecancer.org/en/news/17176-scientists-breach-brain-barriers-to-attack-tumours
(2020年1月15日公開)