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02 Sep 2019
中枢神経系に転移したがんの治療が困難なことは、よく知られている。
近頃、UCLAの研究者は、血液脳関門を突破して中枢神経系に転移したがんに到達し、治療を可能にする薬物送達システムを開発した。
マウス実験では、研究者によって開発されたナノスケールのカプセルに入った抗がん剤の単回投与により、動物の中枢神経系に転移したすべてのB細胞リンパ腫が排除された。
すべてのがんの約15〜40%は神経系に転移しているが、治療の選択肢はほとんどなく、少数の患者でしか治療効果がない。
その理由の1つは、有害物質が脳に入るのを防ぐ自然な防御システムである血液脳関門が多くの薬物をブロックし、中枢神経系に転移したがんへ薬が到達するのを妨げるためである。
抗がん剤を中枢神経系に運ぶことができる容器を作成するために、研究者らは直径約1ナノメートルつまり10億分の1メートルのカプセルを作った。
(ちなみに、1枚の紙の厚さは約100,000ナノメートルである)
カプセルは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと呼ばれる物質でコーティングされており、血液脳関門によってブロックされる可能性は低いと推測される。これにより、カプセルはがん細胞に近づくと抗体を放出できる。
研究者らは、ナノカプセルに抗がん剤リツキシマブを充填し、動物の中枢神経系に転移したヒトB細胞リンパ腫のマウスに投与した。
研究者らは、腫瘍が4か月間どのように成長または縮小したかを追跡した。
ヒト被験者でのテストを含むさらなる研究は保留中ではあるが、UCLAで設計されたカプセルは、中枢神経系に転移したがんを治療するためにFDAによって承認済みの薬物送達手段として使用可能である。
このアプローチは、中枢神経系に転移するがん(乳がん、小細胞肺がん、黒色腫など)だけでなく、原発性脳腫瘍や他の脳疾患にも役立つ可能性がある。
(2019年8月15日公開)